ホーム / インテリア / 暮らしは言葉に出来ましたでしょう

暮らしは言葉に出来ましたでしょう

資産を残さなくていい

修繕について標準的道に沿ってずらりと家が並んでいるとすると、道に面して前庭forevardというものがあり、ちょっとした花壇や、駐車場になっています。それから、家があって、その家の背後、道からは見えないところに、細長く後庭backyardがある。この場合、道に対する位置関係はみなどこも同じで、道は東南北どっちの向きにも走っているわけですから、結局、家がどちら向きかというようなことは、意識の外にある。どの向きに建っても気にしないんですね。で、みなが同じように配置する結果、同じように家の裏側が庭になる。こうして、ずらりと細長い庭が並んで、全体としては、ひろびろとした緑のスペースが確保される仕組みです。そして、仮に反対側も同じように、住宅がならんでいるとしたら、道に挟まれた中間部分には、さらにさらに大きな庭空間ができる。これを私は寄り合い庭と勝手に名付けています。イギリスの住宅地が一見して緑豊かで美しく見えるのは、ひとつにはこういう寄り合い庭の智恵がものをいっているのでもあります。
しかるに日本であれば、みんな南側に庭をとるように家を建てる。
住宅部分が不要となれば
家は建てた後の対応も大事家制度の変な幸福幻想のよう

家具といってもよいでしょう家

工事ができません

そういう考えでは、これも図をご覧いだだければお分かりのように、庭空間は、ちまちました細切れになってしまって、絶対に庭が寄り合うなんてことはありません。
-まぎイギリスの家も、それぞれ細長く板塀で仕切られていますから一つの庭というわけではありません。でも寄り合い庭の空間が全体として大きいことのメリットで、寄り合い庭の真ん中あたりには、大きな木を植えることができます。だから、ロンドンの家の庭には雲を突くような大木がいっぱい生えているということになるし、それによって、日照の問題や、木の葉が落ちて迷惑だと言う人もいません。
これが、都市のなかへ田園を持ち込もうとしたイギリス的なあり方です日本だったら、一人ひとりが農家的な発想を都市にまで持ち込むために、皮肉なことに庭の空間が細切れになってしまってまとまらない。これは、家は必ず南向きで、というようなことを吾が仏尊しとして墨守しているからです。都市に住むのであれば、なにも南向きの家である必要なんかないのです。

賃貸して収益が上げられ部屋を借りる実

そこを、ひとつぜひ発想の転換を促したい。
かくて、イギリス人は結果として大きな空間を留保することのほうを選びます。
そうすることによって、都市であっても結果的に田園的なものを移入できることになりますけれども、本当の田園都市とは、後ろ庭の向こうには、他人の家ではなくて、牧草地や畑、川や池といった風景があるところです。でも、それはロンドンの町中では具現化できない。できないなかでの智恵が、つまり大きな寄り合い庭であって、それによって、できるだけ田園に近い空間を造っていったのですそうすると、これによって、ひとつの森のようなものができる。すると、鳥が集まり、リスが生息し、キッネやタヌキまで出たりもする。自分の家にいながらにして、バードウォッチングも森林浴も楽しめる。芝生を植えたり、花壇をつくって、ガーデニングを施す。そうすると、町全体が、とても緑の美しい、風のさわやかな空間になってくる。
イギリスでは、とくに十九世紀以降、こういう都市のありようが定着したのでした。

土地の広さよりバックヤードの長さ平均的に家の敷地というのは二百坪くらいはあるのですが、イギリス人は不思議なことに土地の広さに関してほとんど意識がないし、まったく興味がない。
では家を買うとき何を気にするのかというと、奥行きが何ヤードあるか、つまりバックヤードの長さを気にします。
工事ではここまでの粗利はでません

施工者側は気密をとる

日本だったら、土地の広さばかり気にして、たとえば七十六、五二平米といった単位まで、いじましく計算するでしょう。しかも、できるだけ整った長方形をしている土地のほうが高いし、南向きの高台で雛壇であればなお高くなる。
ところがイギリス人は広さにはほとんど興味がないので、家の広告にも、バックヤードの奥行きは何ヤードとかって書いてあるけれど、敷地何平米という表記はふつうありません。あとは、部屋の総数やベッドルームの数が書いてあるだけで、それも、一つひとつの部屋の大きさについては触れないのが通例です。日本人からみると、そこはちょっと不思議ですが、思うに、彼らにしてみれば、部屋の機能によって、だいたいどの家でも、同じ広さだから、とくに変わった作りでないかぎり、とりたてて部屋の広さを表示するにも及ばないということなんでしょう。メインベッドルームは二十畳ぐらい、サブベッドルームは六畳か八畳ぐらいといった具合です。その他には、メインダイニングと、応接間であるレセプションがあって、高級な家になると、台所の隣にブレックファストルームもあります。
こうした標準の形も、イギリス人が長い間かかってこしらえてきたもっとも合理的な空間の使い方だと思います
事実上相続税がないイギリスしかも、イギリスという国は、事実上、相続税がありません。
リフォームの全容

住宅が目指す気密性

未亡人が一人残ったとしても、莫大な税金をずっと住んでいたいと思とられる恐れがないので、安心して住んでいられます。夫との思い出深いこの家に、えば、どうぞ住んでいてくださいと国が言ってくれるようなものです。
このように、イギリスのように私有財産が保障されている国で、家を持つことの意味は、子々孫々に伝えるためというより、自分がそこに住みたいだけ住んでいられるという安心感が得られるということなのです。
ところが、日本では、立派な家を造っても、親父が死んだら、法外に高い相続税を払うために、そこに住んでいられなくなってしまう。立派な家を建てれば建てるほどそういう悲劇が起こる。高齢化社会のためにといっていろんな政策が考えられていますが、まず住むところがなくなる、税吏が住民を追い立てるというような税制は、これから非常に大きな問題となってくると思います。住まい、それこそが社会福祉の根幹じゃないかと、私は声を大にして言いたい。
家を持つ、そして、自分が住みたいだけ安心してそこにいられる、それが当たり前なんです。
間取りにしておく方

住宅を供給する事業者に対して

だから、そのためには、すべての政策に優先して、いちばん重要なのは、相続税制度の大幅な見直し、さらに言えば原則的にこれを撤廃するということだと、私は思いますそうしないことには何を言ってもムダごとになってしまう。どんなに立派な家を建てても、いずれ相続税をかけられたら最後、壊すか、不動産屋に売るしかない。そういうことだったら家をどう建てるかなんて考えるのも空しいことになってしまう。さすれば、もうこんな本を書くのも読むのも無意味だってことになるでしょう価値の崩壊、デカダンスの世界です。人生の幸福と相反することですよイギリス人は市民社会として成熟するなかで、私有財産の保障については、保守党が完璧に保障するという政策をとっています。もし税金で巻き上げるという政策を掲げたとしたら、国民に猛反発を受けて、直ちに支持を失ってしまう。ゆえに税制に関しては、滅多なことはできない。
いま、労働党が勢いづいているのも、おそらく保守党がポールタックスという制度を施行したせいです。それは家一軒当たりの頭数で税金をかけるという人頭税ですが、評判が悪くて、実はほとんどの人が払ってない。いくら請求されても、払う理由がないと言って払わない。そのぐらいイギリスの市民というのは強い。
あたまかず
南向き幻想が日本を貧しくしていくイギリス的な思想を元に作られた住宅地が日本でもできないかなと、私は思うんですが、きっとできないんでしょうね。

著者について: